
第6章 血精液症の話し
第8章 シラミのお話し
第9章 膀胱炎のお話し
第10章 尿路結石の話
第11章 漢方薬の話し(其の一)
第11章 漢方薬の話し(其の二)
第12章 尿路感染症の話し
第13章 季節と病気の話し
第14章 「五月の病気」について
第15章 「六月の病気」について
第16章 七月の病気「夏ばて」
第17章 「九月の病気」の話し
第18章 「病後の漢方」の話し
第19章 「道下 俊一先生」の話し
第20章 インフルエンザについて
第21章 肥満について

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第14章 「五月の病気」について |
爽やかな五月になりました。スギ花粉症もそろそろ過ぎていくことでしょう。
でも、ヒノキの花粉症はあとチョット残っているかもしれません。
五月の病気は、所謂「五月病」です。学生・新人さんも、そろそろ学校や会社にも慣れてきた頃なのに、なんとなく気が滅入って勉強や仕事に身が入らない、集中できないと言う方が居られると思います。
なぜ、「五月病」があるのに、「一月病」・「九月病」はないのでしょうか。おそらく、外国では、こんな言葉はないのではないでしょうか。日本では、四月が新年度になるためと思います。
「五月病」と言う言葉は、みなさんご存知のように広く知られた言葉ですが、実は医学用語ではなく、決まった定義があるわけではありません。「五月病」とは元来、大学入学後の学生さんが、五月の連休あとから「鬱的気分」に見舞われ無気力的になった状態につけられた「名前」です。四月から続いた精神的緊張状態が、五月の連休によって弛緩して、再び新しい環境の中に入っていくことによるストレスによって引き起こされるのかもしれません。この「五月病」は、なにも新入生・新入社員に限らずみられます。
朝日新聞の記事に「ワーキングマザーにも五月病」(2001.5.25朝刊)ということで取り上げられていました。子供が入園し、集団生活になって風邪を引いたり、下痢をしたり。お母さんも仕事に復職して、仕事に焦りを感じたりすることによって引き起こされるようです。また、更年期を迎えた女性は、閉経期のホルモン代謝の変化が精神を不安定にしてしまいます。最近では、男性の更年期症ということも言われるようになってきました。同様に、「五月病」を引き起こし易いと考えられています。
五月という季節は、冬に季節が終わりを告げ、太陽が眩しく、土の色が黒々と感じられる時です。身体面では、血圧の変動が見られ高くなりがちと言われています。この辺りに、「五月病」のメカニズムがあるのかもしれません。春から夏への移行に伴う生理活動のスムーズさが欠けた状態によって現れた病態と思われます。漢方医学では、聞いたことがあるかもしれませんが、健康の状態を陰陽のバランスで考えることがあります。交感神経(陽)と副交感神経(陰)がバランスを崩した状態−自律神経失調が「五月病」を引き起こしていると考えられます。
チョット脱線しますが、季節という時間と空間を考えてみたいと思います。
人の一生を春夏秋冬で考えれば、「子供は、季節でいえば何時でしょう?」と質問しますと、殆どの人が「春でしょう。」と答えます。
古来中国では、人生を四つの季節に分けて、それぞれに象徴となる色・神獣を考えました。
零歳から二十歳までの少年・少女時代。冬の時代と考えました。象徴は、「玄武」で黒い亀です。限りない可能性と不安を秘めています。亀のごとく地面を這いつくばって知識を求め、体力を養い、将来に備えています。
二十歳から四十歳までを青春時代。春の時代と考えました。象徴は、「青龍」です。天に昇る龍の時代です。そして、昇るだけではなく、巧みに問題点や困難さを克服していかなくてはならない時代だと思います。
四十歳から五十歳の中年は、夏の時代です。象徴は、「朱雀」です。天に昇った後です。派手に群がって、囀る年代かもしれません。赤色の時代です。今が夏の真っ盛りなのです。日本では、秋のイメージですが・・・
やがて六十歳になり、実りの秋を迎えます。象徴は、「白虎」です。人生は、冬で終わるのではなく、秋で終わるのです。収穫の時期なのです。「白秋」とも呼ばれます。泰然と自分の世界をもった「白虎」の行き方を示しているのでしょう。
脱線してしまいましたが、「五月病」は冬から春に移行していく時に起こりますから、親の保護下から独立した自己の確立を図る時期に起こりうると考えていいと思います。
この時期は、身体はプログラムに従って構築されていきますが、それに見合うだけの精神的なソフトウェアは自らの経験を通してプログラミングしていかなければなりません。この時に、両者の間に摩擦を生じることがあります。これが、1つのストレスといわれるものと思います。これが第二の要因と考えられます。
治療として、漢方におきましては、自律神経の失調に対して改善するために、人間の身体に本来備わっている心身のバランス調整力を取り戻すことです。十全大補湯を用います。
ストレスのある状態を「肝鬱気滞」−イライラ・気分がふさぐ・腹が張って苦しいなどのストレスからくる全身症状−ともいいます。漢方医学では、肝臓を精神作用との関連が強い臓器として考えています。肝機能を高め、気の廻りを改善する漢方が使用されます。
予防は、正しいストレスの改善・新たな目標を見つけ関心を持ちチャレンジしてみることによって生活の活性化が図れるかもしれません。 |
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