
 
第6章 血精液症の話し
第8章 シラミのお話し
第9章 膀胱炎のお話し
第10章 尿路結石の話
第11章 漢方薬の話し(其の一)
第11章 漢方薬の話し(其の二)
第12章 尿路感染症の話し
第13章 季節と病気の話し
第14章 「五月の病気」について
第15章 「六月の病気」について
第16章 七月の病気「夏ばて」
第17章 「九月の病気」の話し
第18章 「病後の漢方」の話し
第19章 「道下 俊一先生」の話し
第20章 インフルエンザについて
第21章 肥満について

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第5章 前立腺炎―ご存知ですか? 若い人の「前立腺の病気」 |
高齢化社会の到来にともない、老年男子にみられます「前立腺肥大症」は増加の傾向にあり、皆さんの周知する病気です。
これに対しまして、若い人たちには、「前立腺」という臓器は馴染みが薄いかもしれません。ところが、「前立腺の病気」は若い人にも見られるのです。この場合は、「前立腺炎」という病気が主体です。
最近、この病気で来院する方が増えております。何事につけ、車を利用する機会の多い現代社会を反映していると思います。車のドライバーや長時間座って仕事をされる方に多く見られます。
「最近、大便がいつも出るような気がするんだけど。」
「どうも、小便が近くて、出た後もすっきりしないんだ。」
「腰が重くて、ソケイ部が腫れぼったい気がしてならないんだ。」
などと、とても曖昧な表現をして来院される方が多く、他科の先生がたを困らせる事があります。患者さんが悪いのではなく、本当に曖昧な症状なのです。何軒かの病院をまわって、ノイローゼと云われた方もありました。
では、「前立腺炎」とは、どのような病気なのでしょう。
前立腺炎には、急性と慢性があります。
「急性前立腺炎」は、尿道から侵入した細菌が、尿道の奥にあります前立腺に感染して起こる病気です。前立腺の炎症のため充血して前立腺が腫れます。また、体の他のところの感染から−扁桃腺炎・蓄膿症・胆嚢炎等−血液やリンパ液によって前立腺に細菌が運ばれて感染を起こす場合があります。年齢に関係なく発症します。とくに糖尿病の方は細菌への抵抗力が弱く感染しやすいので注意が必要です。原因菌は、殆どが大腸菌です。症状は、高熱・尿道や会陰部の痛み・特に排尿の終わりに熱感や排尿痛を感じたり・頻尿になります。若い人が、「先生、おれ、昨日から熱が40℃もあって、おしっこがでづらいんだ。」などと、来院します。尿は濁り、血尿も見られることもあります。食欲もなくなり、全身症状もともなう事が多く見られます。検査は、尿の中に白血球が認められないかを検査します。そして、肛門から指を入れて、前立腺を触れて見ますと診断がつきます。治療は、細菌に有効な抗生剤を使います。検尿で白血球が認められなくなっても、分泌腺に残っている細菌の完治は難しく、内服薬を少し続ける必要があることがあります。水分を多く摂っていただき、排尿量を多くする事が大切です。その後、慢性前立腺炎に移行する事も、見られます。
「慢性前立腺炎」は、前立腺の炎症が慢性的に続いている状態で、全男性の25〜50%が一生に一度は前立腺炎症状を経験すると云われております。慢性細菌性前立腺炎・慢性非細菌性前立腺炎・prostatodynia(適切な翻訳がありません、とりあえず前立腺炎様症候群としておきます。)の3タイプに分類されます。症状は、会陰部・下腹部・陰嚢部などに鈍痛や不快感を感じます。頻尿・残尿感・時に排尿痛なども見られます。また、射精の前後に痛みを感じる事もあります。診断は、直腸に指を入れまして、前立腺を圧迫しますと痛みを生じます。前立腺肥大症や前立腺癌では痛みを感じません。
前立腺マサージの後、分泌液(前立腺マサージ後の検尿か精液)に白血球・細菌が無いかを検査いたします。
@白血球・細菌がありましたら、細菌性前立腺炎です。
A白血球のみありましたら、非細菌性前立腺炎です。
B白血球・細菌とも認められませんでしたら前立腺炎様症候群です。
治療法は、水をいっぱい飲んでいただくことです。これは、前立腺の病変部を洗い流す効果があります。また、便秘も前立腺炎症状を悪化させますので、注意が必要です。骨盤内の血液の循環が悪くうっ血状態がみられます。半座浴をお勧めします。また、長時間座っております場合は、時々、立って脚の屈伸運動をしてみてください。前立腺マッサージで前立腺の分泌腺の中に溜まっております膿性分泌液を排出させます。射精にも同じ効果があります。週1回は精液を出したほうが良いです。
細菌性前立腺炎では、抗菌剤の内服をいたします。
非細菌性前立腺炎の場合も、分泌液に細菌が出現しない潜在性の細菌感染もある場合がありますので、抗菌剤の投与をする場合があります。
前立腺炎様症候群の場合、骨盤内うっ血がある場合、駆於血剤(漢方薬)が有効な事があります。しかし、職場のトラブルなど心的要因がバックグラウンドにあるためになかなか完治しずらい場合が多々みられます。
慢性細菌性前立腺炎の場合の原因菌は、大腸菌・肺炎桿菌・シトロバクター・プロテウス・セラチア・緑膿菌・表皮ブドウ菌などがあります。非細菌性の場合は、一般細菌が証明されませんが、クラミジア・マイコプラズマなどによる前立腺炎が含まれている可能性は否定されていません。若い方の発症が多いため、妊娠についての心配が多いようですが、細菌の排出がある場合は細菌が無くなるまで待った方がいいと思います。精子は睾丸で作られるものですから、心配は要りません。しかし、精液のpHが変わるため妊娠しずらいという報告もあります。
症状のはっきりしない病気ですが、症状を疑がいましたら、早めに専門の先生にご相談ください。そして、日常生活上、気を付けることは守って早く治癒するように頑張ってください。 |
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